イジワルな初恋
「あの人、太一の彼女?」

ひとりの男の子が私の方を指差した。

「おまえな、呼び捨てすんなよ。彼女ってなん……」

固まったまま驚きの表情で私を見た中矢君は、からかう子供たちを振り切り私のもとへ走ってくる。


「え、ちょっと、マジ混乱。なに、なんで?」


中矢君が昔と変わってしまったとしても、そんなの関係なかった。大切な気持ちに、やっと気づいたんだ。


「会いたいって思ってた。十五歳の中矢君じゃなくて……二十五歳の、今の中矢君に」

「岩崎……」


どんな中矢君でも笑って幸せでいてくれたら、それでいい。ずっとずっと、ただ会いたいと願ってた。


「ひゅーひゅー」

「彼女なの?ねー彼女?」

「お姉さん太一のどこが好き?」

気がつくと、いつの間にかふたりの周りを子供たちが囲っていた。

「う、うるせーな!あっち行ってろ」

「わ~太一照れてる~」

「うけるー」

蜘蛛の子を散らすように逃げる子供たち。

「悪い、もうすぐ終わるからちょっと待ってて」

私にそう言って中矢君は子供たちの後を追った。


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