イジワルな初恋
「でも、本気になるのが怖いから……自分の気持ちを誤魔化すためにあんな冷たい態度をとったんだ。情けないだろ?」


本気になるのが怖いと言った中矢君の表情がこれまでと少し違って見えたとき、私の胸がグッと締めつけられた。


「いっぱい助けてもらったのに一番辛いときに支えてあげられなくて、ごめんね……」

「謝るなよ、お前のせいじゃないし、それはもういいんだ」

だって、子供たちに野球を教えていたときの中矢君、キラキラしててすごく楽しそうだった。

「よくないよ。苦手な勉強もあんなにがんばって、毎日練習だって欠かさなかった。誰よりも努力してきた中矢君が……どうして」

悔しくて、悲しくて、中矢君の気持ちを思うと……。


「ごめん、ごめんね……。辛いとき側にいたかった、一緒に泣きたかった、なのに私は……」


「もういいから」


そう言って、中矢君は私を抱き寄せた。


「今、泣いてくれてるじゃん。こうやって一緒に……。それだけで、じゅうぶんだ」


大人になった中矢君に再び抱き締められた私は、溢れる涙を止めることができなかった。


「あのさ……岩崎」

両手で涙を拭い、中矢君を見上げる。

「また……りりーって呼んでもいいか?」

その瞬間、私は満面の笑みを向けて言った。


「もちろん」


ホッとしたようなやわらかな表情を浮かべた中矢君。


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