イジワルな初恋
「ねー中矢君」
「ん?」
「そろそろリアクションしてもいい?」
そう言って私は、中矢君の頭を指差した。
「これ、どうしたの?」
中矢君の頭に手を乗せ、グリグリと撫で回す。
「子供じゃねーんだから、やめろよ」
「だって」
クスクスと笑う私の手を振り払った中矢君が、恥ずかしそうに言った。
「こう見えても俺結構モテるから、りりーが不安にならないようにだよ!」
「すごく似合ってるよ、その…………坊主頭」
あの頃より少しだけ長くて、色は焦げ茶に染まってるけど、風に吹かれて揺れていた髪の毛は、バッサリと切られていた。
「やっぱ似合うね、坊主」
「バカ、これはオシャレ坊主だ」
中矢君が笑っている私の手を、カウンターの下でギュッと握った。
勇気を出して同窓会に参加しなければ、彼の過去を知ることも、自分の気持ちに気づくこともできなかったかもしれない。
あのころ出せなかったほんの少しの勇気が、私の人生を変えてくれた。
真面目で優しくて時々イジワルで、私はそんな彼のことが……。
「大好き……」
ーENDー