イジワルな初恋
翌日は早番のため朝八時にお店に着き、同じく早番の優菜ちゃんと一緒に商品の検品をしていた。

「最近段ボールの数少ないですよね」

「移転に向けて今は入荷の数減らしてるからね。その変わり、移転日前日は地獄が待ってるよ」

わざとニヤッと笑って見せた私を見て、優菜ちゃんは「はぁー」とため息をついた。


「よー、やってるか?」

まるで馴染みの居酒屋に入るかのように、右手を上げながらやってきたのは鏡部長だ。
反対の手にジャケットを持ち、ノーネクタイ姿の部長。爽やかな短髪にほんのり焼けた肌、とても四十歳には見えない。

「鏡部長、おはようございます。こんな早くにどうしたんですか?」

「なんだ、来ちゃだめか?」

「いえいえ、部長に会えてうれしいですよ」

「だろー?岩崎ならそう言うと思ったよ」

フランクに話をする私の隣で小さく頭を下げた優菜ちゃんは、部長にはあまり会う機会がないからか、少し緊張した様子だ。


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