さよならは言わない
純白のウェディングドレス
私は尊から全てを聞かされた。
何故尊が私を裏切り者扱いしたのか、裏切り者と判りながらも何故偽りの関係を持とうとしたのかも。
誤解が招いた結果とはいえ私達は失うものが大きすぎた。
だけど、最悪な事態を迎えながらも忘れきれなかった想いが再び私達を引き寄せた。
ーーー
「尊、これ変じゃない?」
「綺麗だよ。絵里は何でも似合うから困るな。一つに絞れないな」
「でしたら、カクテルドレスを増やされてはどうですか?」
「駄目だ! お腹の子に障るだろ。万が一のことがあったら困る」
今、尊とウェディングドレスの試着に来ている。
私と尊の意見が合わなくてなかなか決まらない。
両家の両親も衣装合わせには立ち会いたいからと、貸衣裳店に大人数で押し掛けている。
そして、私の親友である友美も来てもらった。
「お腹が目立ちすぎなのよね。お産が終わってから式だけあげればいいのに。今時、格式張った結婚式しなくても良さそうなのにね」
相変わらず友美は私の味方をしてくれるが、流石に今回ばかりは両家の結婚式だ。私達の意見ばかりを通すのは難しい。
おまけに、尊の家は私の家とは違う。
一般庶民ではないのだから尊に恥をかかせたくない。
なにはともあれ、結婚話は順調に進んだけれど、私が妊娠したことで挙式を早めにするなど、かなりバタバタした毎日を送っていて、これこそ目が回るとはこう言うことを言うのだと思った。