さよならは言わない

ウェディングドレスがなかなか決まらず、私と尊で悩んだ末に出した結果、妊婦にも優しいシンプルだけど落ち着き感のあるドレスに決めた。

飾り気は少ないし胸元の空きも少なく見た目の派手さが全くない純白のドレスだ。


「絵里とても綺麗だ」

「ありがとう。尊も素敵よ」


誰もいなくなった試着室で新郎新婦の姿で抱きしめあった。

不謹慎かも知れないけれどどうしても尊に感謝したくてキスした。


「ここでそんなキスされたら拷問だろ?」

「あら、感謝のキスよ」


尊の顔は真っ赤になって不機嫌そうな顔をしてたけど、本当は不機嫌じゃなくてただ単純に私のドレス姿が見れなかっただけ。


「今すぐベッドに押し倒したくなるよ」


と言うのが本音だ。

だから、そんな尊が可愛くて私は笑いっぱなし。そんな私を見て尊は不貞腐れていただけ。


「家に帰ったらお仕置きだからな。覚えておけよ」


なんて言う尊のお仕置きは怖くない。それどころか、まるで甘い蜂蜜でも舐めさせられるのか?ってくらい甘い尊が待っているだけ。


「尊、大好き!」

「さあ、ドレス選びも終わったんだ。今日は家でゆっくり過ごそう」

「家で?」

「そうだ。家のベッドが俺たちを待ってるからな」


私達は親も友美もお店に残したままこっそりと帰っていった。

きっと、いなくなった私達に呆れているだろうけど、たまには二人だけになりたいのだから、これくらいの我が儘は許してね。


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