失恋シンデレラ

「中森のやつむかつく!」

部活が終わり制服に着替えたあと、私と瑞穂はコンビニでアイスを買って食べながら帰り道を歩いていた。

「いつものことじゃん」

瑞穂はアイスを一口かじる。
夏の暑さで溶けたアイスの雫が、瑞穂の焼けた肌に垂れてきそうになっている。

「いっつもつっかかってきてさ」

「葉月のこと、好きなのかもよ」

瑞穂の思いがけない言葉に目を丸くして、私は手からアイスを落としそうになる。

「まっさか!中森が私を…って、ないない!」

私はぶんぶんと首をふり、精一杯否定する。

「じゃあ、葉月は中森のことどう思ってるの?」

唐突に投げかけられた瑞穂の質問に、私は足をとめる。
瑞穂からこんな質問をされるのは初めてだった。

こんな質問は水泳部のみんなからしょっちゅうされているので慣れているはずなのに、なぜか答えるのにためらった。

「好きなわけないじゃーん!」

私は笑ってアイスの続きを食べ始める。

「…そうなんだ」

瑞穂はいつも見せる笑顔とはどこか違う笑顔で笑った。

私はそのとき、瑞穂がなぜそんな顔をしたかわからなかった。
でもすぐに思い知らされることになった。
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