失恋シンデレラ
「私ね、前から中森くんのこと好きだったの」

瑞穂の言葉が私の脳に到達するまで、時間がかかった。
何を言われたのかわからず、反応が遅れた。

「え?」

瑞穂は顔を赤くしてうつむいている。
瑞穂が、中森を…好き?

時間が止まったように私は頭の中が真っ白になり、言葉がなにも出てこなくなる。

「1年くらい前から、中森くんのことが好きだったんだけど、葉月も中森くんのことを好きだと思ってたから、ずっと言えなかったの」

瑞穂とはよく一緒にいたし、二人で遊びにいったりもした。
他の誰よりも一緒にいる時間が長かった。

こんなに近くにいたのに、私は瑞穂の気持ちに全く気づいていなかったんだ。

「でも葉月が中森くんのことを好きじゃないってわかって安心した!これからは葉月に相談するね!」


ーーズキン。


なんだろう、この気持ち。

私は別に、中森のことなんて何とも思っていない。
ただの鬱陶しい同級生の男子のはずなのに。

心の中がもやもやする。

まるで霧の中で、行く手を見失ったときのような気持ちになる。
どちらに進めばいいかわからない。

瑞穂に何て言葉をかけて良いのかわからなかった。
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