失恋シンデレラ
「この気持ちは胸に閉まっておこうと決めたばっかりだったのに、さっき思わず告白してしまったんです。そしたらーー」

そうなることはわかっていたのに。

「その好きな人も、私の友達の可愛い子のことが好きだったんです。実はあの二人、両思いでした」

"ごめん。俺、高山のことが好きなんだ"

それが中森の返事だった。

わかっていたのに。
なんでこんなに苦しいんだろう。

「言わなければ良かった。告白なんて、しなければよかった」

涙が目から溢れてくる。

悔しい。
苦しい。
切ない。

誰かを思って泣くだなんて初めてだった。




「……君は、人魚姫の話を知っているかな」

唐突な話に私は顔をあげた。

「?…はい」

「一目惚れした王子様の命を救って、王子様のそばにいたくなった人魚姫は、魔女に声と引き換えに脚をもらい、一緒に暮らせるようになったのに、王子様は別の人を恩人だと勘違いして、その人と結婚することになる。王子様を殺せば人魚に戻れたのに、結局泡となって消えてしまった。恩人だと、好きだと告げられずに」

「そんなお話、でしたね」

「もし人魚姫が自分が恩人だと、王子様が好きだと告げていたらどうなっていたと思う?」

人魚姫が王子様に告げていたらどうなっていたかなんて、考えたこともなかった。

「上手くいった?」

「そうかもしれないね。でも他の人と結婚が決まっているんだよ?それでも恩人だと主張して、王子様と一緒になる?」

「それは……」

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