失恋シンデレラ
翌日は昨日の雨が嘘のような、雲ひとつない青空だった。
「中森」
補習後に、私は中森を裏庭に呼び出した。
「どうしたんだよ梶わ…って、どうしたんだよ、髪」
「ふっふーん、切っちゃった」
昨日の今日で慣れないショートカットヘアのおかげで、すっきりした気持ちになれた。
「失恋したら髪を切るって言うでしょ」
「……」
中森はなにも言わずに下を向いた。
「瑞穂のこと、好きなんでしょ?」
「…ああ」
少し痛む胸を押さえながら、私は続ける。
「瑞穂のどこが好き?」
「…優しくて、気が利くところとか?」
「いつから好きなの?」
「水泳部に入部したときから」
「……ふーん。だって、瑞穂!」
校舎の影に向かって声をかける。
「……え?」
「もう出てきていいよ!」
そう声をかけると、校舎の影から瑞穂が顔を赤らめながら出てくる。
「ちょっ…梶原!お前……」
「私を振ったお返し。あとはお二人でごゆっくり~」
私は中森の声を遮り、裏庭を離れる。
中森が何か叫んでいるようだったけれど、決して振り向かなかった。
これが私の選んだ"結末"だよ。