失恋シンデレラ
「王子様は彼じゃなかったんだよ」

黙っていた男の人が沈黙を破った。

「シンデレラのストーリーって、舞踏会で脱げたガラスの靴を持って、王子様が惚れたその靴の持ち主を探しにいくでしょう」

「…?はい」

「きっと君がピッタリだと思っていたガラスの靴は、実はサイズが合っていなかったんだよ。もしかしたらピッタリだと勘違いしたのかもしれないし、その時は足がむくんでいたのかも」

男の人はこちらに近づいてきて、私の前でしゃがんだ。
そして私の脱げかけていたハイヒールを、きちんと履かせた。

「この先、ピッタリのガラスの靴をもってやってくる王子様、絶対現れるよ」

男の人は笑った。

頬を伝い、こぼれ落ちていた涙はいつのまにか止まっていた。

「ありがとう…」

私は彼につられて笑っていた。

「やっぱり髪、思いきり切ってほしいんです。きちんと受け止めて、前を向きたいから…」

「わかった」
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