ただしいあなたのころしかた
わたしのしいん
「あたしが好きすぎて死んじゃえばいいのに。石川くんなんか」
「明石さんって結構病んでるよね」
「死因、あたし」
「うん病んでる」
一ミリも読んでいる本から顔を上げることなくあたしに返事した石川くんは、一人納得したように言って流す。
おい本。あたしに石川くんの視線を譲りやがれ。そこ代われ。
「……石川くんその本おもしい?」
「まあ」
「もしあたしの体だけにさ、すっごいすっごい面白い小説が彫り込まれてたとしたらどうする? 体中に。もうびっくりするほど石川くん好みの小説。石川くんはあたしの体だけに夢中になる?」
「おもしろかったらね」
「石川くんはあたしの体に夢中なのかー」
「都合のいいところだけ抜粋しないで」
ぱらり。ページがめくられる瞬間、石川くんの視線が一瞬だけあたしの方へ向いた。すぐにまた本へと戻っていったけど。
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