ただしいあなたのころしかた
それから数分もしないうちに、石川くんは教室にたどり着いた。
来た。っていうのは、もうすぐに分かった。
あたしの石川くんレーダーはいつにも増して感度を増していて、石川くんがあたしの動作に気付くより先に俊敏な動きで前に向き直る。
喜美ちゃんは半分呆れたような声で、はや……とつぶやいた。
「話しかけに行かないの?」
「せっかくいい夢見れたのに、現実に戻るのつらい」
「いい夢かどうかは置いといて、夢ってことにしちゃってるじゃん。いつものポジティブはどうしたののんちゃん」
「石川くんが彼氏だなんて、夢に決まってるよ……」
「夢ならもっといい夢みなよ」
「――あのさ、わざと? そんなどでかい声で話されたら全部聞こえるけど」
あたしの石川くんレーダーは過去最高レベルに敏感で、背後からかけられた声と気配を拾って心臓に負荷をかけた。
ぎゃーーー。と悲鳴を上げたのは心の中だけで、できるだけ平静を装ってゆっくり時間をかけて振り向く。
石川くんだ。
石川くんの方から話しかけられた。ファーストモーニング。
「お、おは、おはおは、お、」
「……明石さん、赤い。顔」
「いや、っ、いや!」
だって。これは……!