あと5センチで落ちる恋


そして迎えた月曜日。

私は今新幹線で、水瀬課長の隣に座っている。


「課長、どうぞ」

「ああ、ありがとう」


買ってきたペットボトルのお茶を課長に手渡し、自分のぶんの蓋を開けて一口飲んだ。
窓から外を見ると、青空と自然の緑とのコントラストが綺麗だ。


「天気いいですね」

「そうだな」


課長はカバンからなにかの資料を取り出して読み始めた。新幹線の中でも仕事をするつもりらしい。

なんとなく手持ち無沙汰な私は、課長を見習って越智からもらった営業対策の資料を見ることにした。

この出張をうらやましがっていた女子社員達には驚かれるだろうが、せっかくの2人での出張なのに会話がほとんど無い。
以前はこの無言が気まずいと思ったのに、今はそうは思わないことに気が付いた。

(慣れてきたのかな、課長に)


「…中野」

気付けば課長が私を見ていた。
どうやら無意識に課長をじっと見ていたらしい。


「な、なんでもありません…」

「お前嘘つくの下手過ぎるだろ」

そう言って溜息をついた課長が手元の資料を閉じて足を組んだ。
その姿がサマになっていて、こういうのがいい男なのかと妙に納得した。


「前も言ったけど、言いたいことがあるなら言えって」

「課長、前より話しやすくなりましたよね」

「はあ?」


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