あと5センチで落ちる恋
「越智の片想いの相手、聞きましたか?当てましょうか」
「一応言われたが…心当たりがあるのか?」
「心当たりというか、私の願望なんですけど」
同期としてずっと見てきた私としては、他に考えられない。この前の飲み会のときに気付けなかったのが少し悔しいけれど、越智も隠そうと必死なのだろう。
「総務の清水由紀ですよね」
「お前…すごいな」
「やった!」
(由紀、両想いだよ!)
すると課長が少し驚いた顔で尋ねた。
「どうして喜ぶんだ?…ああ、まさか清水も越智のこと」
「課長、これは私達2人だけの秘密です」
「は?」
「いいですか、誰にも言ったらダメですよ!2人はお互いが片想いだと思い込んでます。私達のせいで変に気持ちをバラしたら大変です。あくまで自然の流れにまかせて、でも出来る限り協力するんです!」
「自然にまかせて…協力?なんだお前、難しいこと言うな」
課長は心底面倒くさいといった表情でそう言った。
「さっきも言ったが、俺は恋愛ごとには興味がない。というよりよくわからない。2人のことは秘密にしとくが、それ以外に何かしろって言われても無理だぞ。お前は上手いことするんだろうけど」
それを聞いて、 私は首を横に振ってみせた。
「いいえ。実は私も課長と同じですよ」