あと5センチで落ちる恋
4ヶ月前
6月。
じめじめした空気に包まれ、ゴールデンウィークとお盆休みのちょうどあいだでなんとなく無気力になる。
「なんかさ、可愛いよね。こう、恋してるっていうの?」
「ちょっ…!しーっ!しーっ!」
「誰もいないって。いいなあ私にもちょうだい?そのオーラ」
会社が休みの日曜日、由紀とランチに来ている。
越智と両想いなことがわかってからというもの、ついうずうずしてしまう。でも当の本人はどうしたって不安らしい。
なんとなくはわかる。
人間といういきものは、期待して駄目だったときのダメージにとことん弱い。そのショックから自分を守るために、あえてよくない結果を考えてしまうのだと。
「もうさ、その悩む時間がほんと尊敬に値するっていうか」
「あんたは恋愛小説でも読んでちょっと勉強したほうがいいんじゃない?」
由紀が呆れた目を向けてくる。その視線から逃れるようにデザートメニューを手に取った。
思えば由紀の恋話を聞くのは久しぶりだ。合コンの話なんかは多かったけれどこんな本気の話は。
そしてそれは、こんな私が少し羨ましいと思うぐらいには衝撃的だったのだ。
「あの、気になってたんだけど、越智のどこを好きになったの?」
そう尋ねると、由紀はアイスコーヒーのストローを持った。グラスの中の氷がカランと音を立てる。