あと5センチで落ちる恋
「どこって言われても、自分でもそもそもいつから好きだったのかもよくわからないし。もう何年も同期として仲良くやってきて本当に今更すぎて」
「そんなもんかあ。不思議だよね、上手く答えられないのに好きとかって」
真似してアイスティーのストローで氷をいじってみる。由紀のように良い音が鳴らなかった。
「じゃあ、どうして好きだって気付いたの?いきなり?」
「いきなり…かなあ。……誰かに取られたくないなって思ったっていうか。越智が他の誰かと付き合ってるの想像したら、すごく嫌だって気付いちゃったの」
「わぁ…なんかすごい、感動、トリハダ」
思わず腕をさすってしまった。
”ただの同期”が一瞬にして”好きな人”に変わる瞬間。それって、すごいキセキだ。
「他人事だと思って。いっとくけどね、紗羽にだって起こるかもしれないんだから。ほんっと突然に、一瞬で、だからね!」
「ええー想像つかないなあ」
「想像のつく恋愛なんて面白くないじゃないの!」
由紀はそう言うけれど、そんなことが自分の身に起きるなんて到底思えない。今までの誰かと付き合ってきた経験なんて、恋愛だと呼べないものだったのかもしれない。