あと5センチで落ちる恋
「それはそうと最近の紗羽、やけに仕事楽しそうじゃない?」
「え、そう?」
「そうそう。生き生きしてるっていうか、やりがい感じてます!みたいなのが伝わってくるのよねー」
少し考えてみる。
心当たりがないわけではないのだ。確かに最近、仕事に対してすごく充実感がある。前よりもっとレベルアップしたいとも思うようになった。
きっかけはきっと、水瀬課長。
毎日嫌というほどスキルの差を見せつけられ、圧倒される。
その大きな背中に追いつきたくて追いつきたくて、おこがましいかもしれないけれど肩を並べたくて。
「水瀬課長とも、総務の中では紗羽が一番息が合ってる感じする。まあ他のみんなも最初みたいにビクビクはしなくなってるけど。女子社員は相変わらず違う意味でうるさい」
「あ、それは多分ね、出張一緒に行ったおかげだと思う」
「ああ、先月の謎の出張!あれどうして紗羽だったの?いまだに謎なんだけど」
「えと…実は水瀬課長が指名してくれたみたいで…」
「…ええっ!?」
由紀は急に大きな声を出して目を丸くした。私も聞いたときは同じように驚いたから気持ちはわかる。
「あんまり言わないでね。なんか妬まれそう」
「聞いてないわよ!どういうこと!?」