あと5センチで落ちる恋
「私と組むのが一番やりやすそうだと思ってくれたみたいで。…って自分で言うのは調子乗ってるみたいで嫌だけど」
あくまでさらっと言ってみる。だけど由紀はあまり納得していなさそうだ。
「え、ねえ、ほんとにそれだけ?実は他に理由があるんじゃないの?」
「他にどんな理由があるのよ」
「そりゃあ…紗羽に好意を持ってるとか」
どうやら由紀は本気でそう思っているらしい。だけどそれはありえないことはよく知っている。
一緒に飲んだときのあの恋愛への無関心っぷりときたら。
「あのね、それは絶対ない。越智も言ってたでしょ?課長が昔から恋愛に興味ないって」
「それはそうだけど…逆に紗羽はどうなの?指名されて嬉しかった?」
「そりゃ嬉しいよ。あんなにデキる人に仕事を認めてもらえたんだから」
「そういう意味じゃなくってさあ!…ああーもう恋愛ヘタレな2人めんどくさあ」
失礼だ。
面白くなさそうな顔で残ったアイスコーヒーを一気飲みする由紀。だけど実際になにもないのだから仕方がない。
「なにを期待してるのか知らないけど、私も課長も真面目に仕事してるだけだからね。あ、由紀と越智のことは全力で応援してる」
「うるっさいわよもう…」
最後にまた由紀の恋する顔が見れたので、満足することにした。