あと5センチで落ちる恋
「好きです!付き合ってください!」
…これはなんの偶然なのだろうか。
自分が謎のアプローチを受けた数日後、今度は人の告白現場に遭遇するとは。
「水瀬課長に釣り合う女になりますから!」
しかも、水瀬課長への。
最近の社内は私が知らないだけで告白ブームでも巻き起こっているのだろうか。まあ、水瀬課長に限ってはモテるのは最近だけではないだろうけれど。
今は昼休憩だ。
たまたまあの旧書庫に用事があって来ただけなのに、どうして私がコソコソしてるのだろう。これではただの盗み聞きになってしまう。
かといって、こんな場面にズカズカ乱入する気にはなれない。
「…悪いがそれは出来ない」
「い、今は私のことなんとも思ってなくてもいいんです!一緒にいさせてください、絶対、好きにさせてみせますから!」
(すごい自信。よくあんなこと言えるなぁ…私だったら保証出来ないから無理だ)
水瀬課長のことを本気で想っているのが伝わる、情熱的な告白だった。課長がどう返すのか気になって、無意識に耳をすませる。