あと5センチで落ちる恋
「俺は誰かと付き合う気はない。諦めてくれ」
「…他の女の子達もみんなそうやって断られたって聞きました。誰か好きな人がいるんですか!?」
一体課長はここへ来てから何人に告白されているのか気になったが、それよりも課長に好きな人がいるならそっちのほうが大ニュースだ。
「………もう休憩が終わる。部署に帰れ」
(なんですかその間は!?)
思わずさっきまでより身を乗り出して覗くと、泣きそうな顔をした女の子が振り返ってこっちに向かってくるところだった。
慌てて入り口から離れ、たまたまこの
近くを歩いているフリをした。
バタバタと走っていった女の子は顔を隠すようにして、おそらくお手洗いに向かうのだろう。
あの子も恋をしている。
結果は駄目だったけれど、課長のことを好きだと気付き、気持ちを伝えようと決意するまで色々と悩んだりしたのだろう。
なんてすごいことなんだろう。
「お前、いい趣味してんな」
「っ!」
課長が部屋の中から顔を出してこちらを見ていた。
「盗み聞きにしてはバレバレだったぞ」
「ち、違います!私はちゃんとここに用があって来ただけで!…入るに入れなかったっていうか…すみません」
「まあ、そうだよな」