あと5センチで落ちる恋


「…でもちょっとだけ、寂しい気持ちもあるんです」


黄金色の液体を見つめる。
仲良く寄り添い合うあの2人の姿を想像して、水面に浮かべてみる。グラスに囲われて、まるで2人だけの世界のように見えた。


「あ、すいません私、こんなこと言われても困りますよね」

「いいから言ってみろ」

その優しい声に促されて、心の中の声が外に出たがる。


「…私達3人、入社当時から仲良くて。他の同期が辞めていっても、辛いことがあっても支え合ってきたというか」


思えば私達は最初からウマが合ったというか、意気投合していた。
仕事の大変さも上司への愚痴も、気兼ねなく遠慮なく相談してきたのだ。

今回の越智と由紀の気持ちは、初めてお互いがお互いにした隠し事だったように思う。


「でもこれからはきっとそうはいかないじゃないですか。一番の心の支えは同期より彼氏彼女だろうし。いや、上手くいってくれるのがもちろん何より嬉しいんです。だけど…」


言葉に詰まる。
すると、頭をポンポンとしてくれる温かくて大きな手があった。


「きっと知らないうちにお互いに下の名前で呼び合ったり、お互いの前だけで泣いたり、もう私は必要ないっていうか…」


ただの自分勝手でわがままな言い分だ。
こんな気持ちは誰にも打ち明けることはないと思っていた。

だけど今隣にいてくれる人は、どこまでも優しくて、すべて受け入れてくれるような気がしたのだ。


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