あと5センチで落ちる恋
2ヶ月前
8月。
冷房の効いた社内と外との温度差に体がおかしくなりそうだが、汗だくの男性社員を見かけると文句も言えない。
「あ……ったかい」
「きっとすぐ暑くなるわよ」
由紀と2人で会社の外に出ると、思ったよりも体は冷えていたらしい。
暑さを覚悟して外に出て反射的に”暑い”と言いかけたのだが、意外とその暑さがちょうどよく感じてしまった。
(最近体調あんまりよくないし気をつけないと…)
夏風邪はこじらせるとつらい。今日の晩御飯はあったかいうどんにしようと決めた。
「紫外線の中に、女2人待たせるなんて最悪。市原くんにやってもらえば良かったのに」
「出迎えは女性社員がっていう暗黙の了解があるでしょ。先方からはあと5分ぐらいで着くって連絡あったからもう来ると思うけど」
私達は今、会社が昔からお世話になっているリフォーム会社の社員を出迎えるべく、外で待っている状態だ。
なんとこの度、あの旧書庫をリフォームして、新たに会議室を設けることになった。
打ち合わせや予算など、すべて総務課が担当することになり、私と市原くんがそれに就くことになった。
というか、担当者の希望を募ったところ市原くんが手を挙げたのだ。じゃあペアは教育係をしていた中野がいいだろうという周囲の眼差しに、やりますと言わざるを得なかった。
一応、1ヶ月間で教育係というのは終わりだ。しかしまだまだ教えきれていない部分はどうしてもあって、同じ総務課として変わらずにサポートすることは心がけている。