あと5センチで落ちる恋



(本気で風邪ひいたかも…)

体がだるい。
寒気がして食欲がない。

やってしまったと思いつつ、今日は大事な打ち合わせがある。早退するわけにはいかなかった。


午後2時からリフォーム会社との打ち合わせのため、すでに資料を移してガランとしている旧書庫に、テーブルとイスを並べてある。実際に部屋を見ながらデザインの最終決定を行うのだ。

まだあと1時間程時間があるので、先方に読んでもらう資料の最終確認をする。
市原くんとも相談しようと、席を立った瞬間。


「市原!」

「は、はい!」

水瀬課長が市原くんを怒鳴りつけた。


(…すっごく嫌な予感がする)

「お前昨日営業からまわってきた書類どうした」

「え…と、目を通して問題なさそうだったので、僕が対応して返却しておきました」

「馬鹿野郎!あんな大事な書類になに勝手に対応してやがる!お前の判断だけで通せるわけないだろうが!」

「え!す、すみません!」


こんなに怒っている課長は久しぶりに見た。どうやら重大なミスをしてしまったらしい。


「いいか、お前の安易な行動で営業にかなり迷惑がかかってる。…今すぐ資料作り直して謝ってこい!!」

「そ、そんな…!」


それでは市原くんはこっちの打ち合わせには参加出来ない。しかしまずは自分でやってしまったミスの後始末が先だろう。

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