あと5センチで落ちる恋


「紗羽は…最近どうなの」

「え、私?なにが?」


最近は仕事がまた楽しくなってきたけど、と言いかけてやめる。まさか今そういうことが聞きたいわけじゃないだろう。


「その、誰かいい人いるとか、さ…」

「なに、いい人って。今まで私にいい人がいたことある?」

「…まじかよ。いくと思ったんだけどなあ…やっぱあの人の場合難しいかあ」


独り言のようにブツブツと話す越智。私はわけがわからなくて、もやもやとしてしまう。


「誰のなんの話?」

「…俺と由紀の妄想話!」


じゃあな、と言って立ち去っていく越智。完全に消化不良な私は首をひねり、眉間にしわを寄せてしまった。


(……いい人かあ)


いつか私も由紀と越智のように、一緒にいることが自然で幸せに思えるような相手が出来るのだろうか。自分ではあまりピンと来ない。

それでも、以前の自分ならありえない程度には、そういう日が来ればいいなと思えるようになった。



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