あと5センチで落ちる恋
それから数日後。
「うわ、なんだその顔。葬式かよ」
「…このカップルほんと容赦ないよね」
営業課に用事があったので覗くと、越智がすぐに気付いて駆け寄ってきてくれた。
「はいこれ、上半期の社員向けアンケートね。毎年面倒だけどちゃんと全員にまわしてね」
「今年ももうそんな季節かー。コピー機新しくしろって書いてやろ。最後意見まとめるのも総務だろ?」
「そう。だから適当なこと書いてたらすぐバレるよ、私に」
気付けばもう今年度も半分が過ぎようとしている。
いつの間にか春を終え、夏を終え、去年よりも1つ歳をとり、今年で何歳になるか考えるのも嫌になる。
「…寂しいって顔してる」
いつの間にか私の顔を覗き込んでいた越智がそう言った。
「ま、無理もないか、この2週間は。つってももうそろそろ経つな」
「私、そんな顔してる?」
「自覚あんだろ?俺は、そんな顔の紗羽も悪くないと思うけど?」
越智はなんとなく嬉しそうだ。
先日、いい人はいないのかと聞かれたことを思い出した。
私が越智と由紀に幸せになってもらいたかったように、越智も私にそう思ってくれているのかな、と思った。