あと5センチで落ちる恋


「紗羽、今日の夜空いてる?」


総務課のフロアに戻ると、休憩から戻ってきたらしい由紀が声をかけてきた。


「合コンのお誘いならお断りだけど」

「違う違う!久しぶりに同期3人で飲もうって越智と言ってんの!最近なかなか3人揃うことなかったじゃない?」


越智蒼介(おちそうすけ)は、私と由紀の同期で営業課に属している。
総務課の私達とはあまり直接的な関わりはないものの、今でもよき相談相手として仲は良い。


「越智が来るの確かに久しぶりだね。じゃあ今日は残業しなくて済むように頑張る」

「さすが!じゃあいつものお店に現地集合ね。あ、それと私、もう合コンとかそういうのは…やめることにしたから」

「え?なに、どうしたの」


由紀は明るい。
社交的で人付き合いもマメで、飲み会なんかでは盛り上げ役になるタイプだ。
彼氏がいないこともあり、いまだに合コンに引っ張りだこなのだが、本人もまんざらではない様子だったのを知っている。


「夏までに彼氏作りたいとか言ってなかった?…もしかして」

「んー、その辺のことは今度2人でご飯いくときにでも聞いてよ。とにかく夜、よろしくねー」


意味深な言葉を残してデスクに戻る由紀の後ろ姿をぼんやり見ながら、首を傾げた。






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