あと5センチで落ちる恋
0ヶ月前
10月。
木々が赤やオレンジに染まり始める季節。秋は、春や夏に比べてなんとなく気持ちが落ち着きやすい気がする。
だけど今年は、そうはいかないらしい。
「喧嘩したぁ!?どうして!?」
「知らない!あっちに聞いて!」
天気もいいし涼しくなってきたので、今日のお昼休憩はオープンテラスのあるカフェでランチすることにした。
そこで、なんと越智と喧嘩したと由紀が言ってきたのだ。
「この前まであんなに順調そうだったのに…。はやく仲直りしてよ」
「私はしたいけど!…蒼介はもうしたくないかもしれないし」
「はあ?そんなわけないでしょ。…これ長引くタイプの喧嘩だめんどくさい」
今までの付き合いから予測するに、おそらく由紀の素直になれない部分に越智が痺れを切らしたとか、そういうことだろうと思った。
「で、原因は何なの。そこまで話して言わないとかなしだからね」
「……自信なくなって」
観念したように話し始めた由紀の言葉は、少し意外なものだった。
見ればその表情もなんだか由紀らしくない。
「あのさ、もう紗羽だから包み隠さず言っちゃうけど。私達付き合ってもう3ヶ月経つのに、何にもないっていうかね?」
「何にもない、って…ああ、なるほど」