あと5センチで落ちる恋
「不安どころじゃなくなってきて。付き合ったこと後悔してるのかなとか、…別れたいのに言い出しにくいのかなとか。一度そうやって仮定してみたら、もうそうとしか思えなくなって、それで」
「…それで?」
「昨日の夜会って八つ当たり気味に言っちゃった。それが喧嘩の原因」
由紀が不安になるのもわかる。
さすがに付き合ってからそんな風に距離を取られると、付き合ってるのか自信もなくなるのは無理もない。
だけど何事も言い方というのは重要だ。
「…なんて言ったの」
「わ、別れたいならそう言えばいいのに、とか、なんかそんな感じ?」
「ちょっ…、もっと他に言い方…!」
「とにかく!蒼介が別れたいならもう私はすんなり受け入れます。以上!」
これは厄介だ。
越智に早急に話を聞く必要がある。
付き合うお膳立てをして、仲直りまで協力してやらないといけないのか、とわざとらしくため息をついた。
だけどどうしたってこの2人には、幸せそうにしていてほしいのだから、私も相当なお節介かもしれない。
(本当は今日は私も話したいことあったんだけど。それどころじゃなくなったなあ)
テーブルに置かれた伝票をちらっと見て、ここは由紀におごらせようとひそかに思った。