あと5センチで落ちる恋
”今日の夜用事ないなら会社の休憩スペース集合”
そんな内容のメールを越智に送ったのは、由紀から相談された次の日だった。
さすがに私も、越智と2人で飲みに行くことは避けている。由紀は怒らないだろうけど気持ちの問題だ。
仕事を終えて先に休憩していると、げんなりした様子の越智がやって来た。
「お疲れ」
「紗羽もお疲れ」
どうして呼ばれたのかわかっているのだろう、越智は何も言わずに飲み物を買う。
「紗羽、最近またいい顔してるよな」
「そう?自分ではわからないけど」
「答え出た感じ?」
「…何の話!」
先手必勝とばかりに聞いてくる越智を睨みつける。
「…で?そっちは」
そう尋ねると、だよなぁと小さく声を漏らして越智は頬杖をついた。
「結局さ、惚れたほうが負けなんだよ恋愛って。情けないことに」
「恋愛音痴の私にもわかるようにどうぞ」
「…ようするに、俺は由紀のこと大切だよ。ずっと一緒にいたいと思ってる」
この言葉だけでもう、由紀はなにか勘違いをしていることがわかる。
別れたいなんて、とんでもない。
「俺はそういうの、わりと伝えるタイプなんだと思う。本人目の前にして、好きだとか、もっというと愛してるだとか言っちゃうような」
「うわあ…」
なんか照れる。
こっちが照れる。