あと5センチで落ちる恋
「だけどさ、由紀はそういうこと言うの苦手だろ?」
「んー、だろうねえ」
素直じゃない、極端にいうと天邪鬼なところがある由紀は、わかりにくいところがある。
意地っ張りで、わかる人からすればそれも可愛いのだけど。
「紗羽だから正直にいうとさ、俺怖いんだよ。あいつが何考えてるかわからない。いうほど俺のこと好きじゃないっぽい。…俺がずっと一緒にいたいと思ってる隣で、いつ別れてやろうかって考えてるかもしれない」
「ちょっとそれは」
「馬鹿みたいって思うだろ?でも3ヶ月ずっと、俺ばっかり想ってるよ。…まじで」
…なんだか、切なくなった。
どうしてお互い想いあってるのに、上手くいかないんだろう。
好きな気持ちって報われない。
「俺、これ以上幸せな気持ち味わったら、失ったとき耐える自信ないなって。近付きすぎたらその分ダメージでかいよなって思って、ちょっと距離保ってる」
「…なんだ、どっちも悪いとこあるよ。お互いにさ、どうして思ってること言わないの。由紀」
「え」
私達からちょうど死角になるところでうずくまっていた由紀が顔を出した。
その顔は、涙でぐしゃぐしゃになっている。
「…まじかよ。ほんっとお前やってくれるわ」
「ありがと。褒め言葉として受け取っておきます」