あと5センチで落ちる恋
(結局、想ってるだけじゃ伝わらないんだよね…言葉にしなきゃ)
荷物を取りに行こうとエレベーターの前まで来ると、先にエレベーターを待っている人がいた。
「お前またあいつらの世話焼いてたのか」
「課長!見てたんですか!?」
「不可抗力だ。俺はお前らより先にあそこにいたんだから、文句言うなよ」
「それはなんというか、すいません」
2人して到着したエレベーターに乗り込む。総務課のある階のボタンを押して、課長の隣に立った。
「…上手くいっても問題があることもあるんだな。あいつらみたいに」
そう言った課長が、いつかみたいに面倒だと言っているようで、少なからずショックを受けている自分がいた。
「やっぱり課長は、恋愛する気はないって…今も思いますか?」
思い切ってそう尋ねてみる。
おそるおそる課長の顔を見ると、困ったような表情をしていた。
その顔にまた、少し胸が軋んだ。
「……それはお前もだろ?」
そしてこの一言で、軋んだところが痛んだ。
「あ、で、ですよね」
「…だよな」
痛んだところがズキズキと、大きくなっていく。まるで心に穴があいて、そこに心臓が吸い込まれるように。
課長はそれきり、私のほうを見ることはなかった。