あと5センチで落ちる恋


「自分でも信じられないが、そう思う。一緒にいたいし、他の奴に渡したくもない」


まさかの展開に頭がついていかない。

それはつまり、だから、課長は恋をしてるということだろうか。
言い換えると、好きな人がいることになる。

あの水瀬課長に。


「それは…」

誰のことですか、と聞く勇気がない。
足が震えてきたような気がする。ぎゅっと拳をにぎり、ひたすら耐える。


「もっと傲慢で、協調性がなくて、短気で優柔不断でトロくて、後ろ向きな奴だったらこんなこと思わなかったんだろうけどな。………お前が」


思考が停止する。


「か、課長、いま、なんて…」

「お前が、こういうのは苦手なのは知ってる。恋愛が苦手なことも知ってる。だから迷惑なら忘れてもらっていい。俺も諦める。だけどもし少しでも、一緒にいてもいいと思えるなら…」


真っ直ぐ、射抜かれるように目を見られる。
その強い意志に、目をそらすことが出来なくなった。


「俺と、恋愛してみないか?」


視界が一気に色付いた。




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