あと5センチで落ちる恋
「まあ、つまりだ。かなり遠回しな言い方だが…俺はお前のことが、どうも…好きみたいだ」
信じられなかった。嘘だと思った。自分の都合のいいように、勝手に脳内変換してしまったかと疑った。
だけど課長の顔を見ると、そんな思いは消えていく。
顔を少しだけ赤くして、照れたように目を泳がせるその顔に。
「あー、悪い、やっぱり困るな。っておい、どうした?」
いつの間にか私の頬には涙が伝っていたらしい。
途端に慌てだす課長を、とても愛しいと思った。
「…私、課長のことが好きだって、言ってもいいんですか…?」
そう言うと、焦った顔が驚いたものに変わって目が見開かれたかと思ったら、次の瞬間ぎゅっと眉間にしわを寄せた。
それを見たと同時に、腕をぐっと引かれた。
「……取り消しはなしだからな」
「そんなことしません」
「そうしてくれ。……もう、俺の気持ちは取り消せないから」
好きだよ。
恋愛出来ない2人が、同じように想いあって一緒にいたいと願うようになる。
こんな奇跡はきっと、今世紀最大なんじゃないかな。
温かい腕の中で、そんなことを思った。