美月~大切なあなたへ~
「日高。お前の傷は、もう癒えているのか?」



唐突な先生の質問。


すぐに意味が理解できた。



『私は、幼かったですし、周りがすごく支えになってくれていましたから。

傷は癒えたのか、と訊かれれば、いいえ、と答えますけど。
きっとずっと癒えません。痕は、永遠に残ります。』



沖田先生は、黙って聞いていた。



「ん……」



不意に、背後から声がした。



「おっ。浜田、起きたか?」



先生が、イスから立ち上がり、みっちゃんのそばに歩み寄った。



「おひらへんへぇ…?」



「おぉ。落ち着いたか?
だるさとかは感じないか?」



「らいよーふれふ…。」



みっちゃん………


うまく喋れてない……



ヤバッ!!


笑ってしまうぅ~~!!



「あぁ~……みおちだぁ…」



みっちゃんが、ベッドの縁に腰掛けていた私のジャージの裾を掴んだ。



『ぶはっ!!』



寝ぼけ声のみっちゃんに、遂に吹き出してしまった。




いままでのシリアスな会話からは想像出来ないような、和やかな空気。




沖田先生も吹き出して、みっちゃんのホッペをつねった。



笑わせんなよ!って。




訳が分からず痛がるみっちゃんは、かなり面白い。




丁度良く、六時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。



ふと、五・六時間目を楽しみにしていた私を思い出した。




こんな風になるなんて、思ってなかったなぁ…





掃除があるので、まだ少し寝ぼけているみっちゃんと一緒に保健室を後にする。





「日高。」







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