美月~大切なあなたへ~



“あなたは、出来るのにしないだけだ。現実から逃げてるんですよ。”



まだ………出来ないよ………



“逃げてばかりじゃ何も変わらない。そんなんじゃ、何も戻ってなんて来てくれない。”



分かってる。分かってるよ。

でも……俺はまだ………



“出来る事があるのに、なぜ行動にでない!?”



『くっ……そぉ!!!』



持ってた鞄を床に叩き付けて、イスに倒れ込むように座った。




“日明先生?”




頭を抱える俺の中に、温かな声が響いた。




『おぉ……ひ…だか…。おはよう…。』



“おはようございます。
今日、朝から暑いですね!気を付けてくださいね。”



『おぉ…、さんきゅ……お前もな…。』



“はいっ。気を付けます!じゃあ、また後で。”



『ひだか…。ウッ……なみ……ヒクッ……おれ……さみしいよ……。ズッ……ごめん……ごめん……。』





心の日高と会話をした変人な俺。


心の日高の笑顔は、自然と奈美の笑顔に変わった。





今日、独りになって初めて声を出して泣いた。



自然と声に出た、今まで隠していた本心に、また涙が溢れた。






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