美月~大切なあなたへ~
龍心の過去は、詳しくは知らないけど、かなり重い出来事らしい。



おおまかに聞いた話だと…







“大学在学中、彼女の妊娠が発覚し、結婚を約束したが、それを待たずして、彼女は交通事故で亡くなった”








フラれただけともとれる俺の問題より、かなり重い影になってるだろうな。




しかし…それと関係あることが起きたのか?





「俺はともかく、日明には言っておいた方が良いんじゃないか?」



催促する沖田先生。



でも、あんな過去と関係あるようなこと…


俺にも関係あるってどういうことだ?


意味わかんね!!




「ふぅ……」



た、溜め息!


龍心君、溜め息!?



なんか緊張するんですが…




「日明先生。」


『あ、はい!!』


「俺の彼女のことは、知ってますよね?」


『えっと、結婚を待たずして亡くなったって…』


「そうです。俺が就職するまでは、彼女は実家で暮らす予定でした。大学生の俺には、経済的に彼女を養うのは難しいからです。
妊娠が発覚したのは、俺が四年になったばかりのときで、子供が生まれた次の月には、俺は卒業している予定でした。

しかし、その冬、俺の家に遊びに来ていた彼女は、買出しの途中、トラックに跳ねられて即死でした。

ベビーカーとか、オモチャとか、子供服とか、全部揃えてあったのに…
新居だって決めてあったのに…
幸せの絶頂期に、俺は全てを失ったと思った。もう、彼女以外愛せないと思っていた。
あんな別れ方で、他の人と付き合って、結婚なんてあり得ないと思っていた。」



そりゃそうだろうな。


一歩踏み出せば再会できる俺とは、訳が違う。


死ぬって…本当に大きいことなんだ。





< 114 / 200 >

この作品をシェア

pagetop