美月~大切なあなたへ~
―――次の日―――

「いらっしゃい美緒ちゃん、大輝くん、千尋さん。」



大きな、いかにも日本家屋と言う感じのお家の玄関で、笑顔で迎え入れてくれたのは、母方のおばあちゃん。





うちのお母さんは農家産まれで、結構なお土地持ちだったんだ。




ちなみに、千尋っていうのはお父さんです。




父方の祖父母は、私が生まれてすぐ亡くなったそう。






「お久し振りです、お母さん。

なかなかこっちに顔出せなくて、すいません。」





「いいんだよ、千尋さんも大変だろう?

今日だって、遠いところから車で来てくれて…。


さぁさ、お上がんなさいな。」






「「お邪魔します。」」





うーん………。




やっぱりおばあちゃんの家は広い!






居間にはおじいちゃんがいた。




広い部屋に一人、タンクトップにオレンジの短パン履いて麦茶飲んで……。




『久しぶり、お邪魔します、おじいちゃん。


ずいぶんと涼しい格好だね。』





「おぉ!美緒!!

久しぶりだなぁ!また大きくなってー!


早く線香あげて、一緒に麦茶でも飲もう!
暑かったろう?」




爽やかすぎる笑顔を苦笑いでかわして、お母さんに線香をあげにいった。






「お母さん、綺麗だね。」





大輝は、お母さんの記憶がほとんどない。




姿を変えることのない遺影を見て、毎回のように“綺麗だね”って言うんだ。





そのたびに何とも言えない悲しい顔をするお父さんを見ると、なんだか胸が痛む。







お母さんの、あの頃から変わらない笑顔を見て、不思議な感覚を覚えた。







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