美月~大切なあなたへ~
「日高、コイツは?」



席に着いた私に、浜本が、隣りの空いている机をトントンとつつき訊いた。


『保健室。みっちゃん、食べ過ぎたみたい。』


「ふ~ん?」



明らかに嘘だけど、それ以上何も言い様がないし…。





「遅れてスミマセン。号令はいいです。授業入ります。

あ、先に言っておくけど、六時間目は自習になるから。日明先生に急な出張が入ったので。」




龍心先生は、怖いくらいいつも通りの様子だった。



教室には、理科が自習になったことで、“え~”とか“やった”とか、色んな声が響いている。




「はい、じゃあ授業始めるぞ!話やめてぇ。」




――さっきあんなことあったのに、どうしてそんなに普通なんですか?



いつも通りすぎる先生の授業を聞きながら、さっきの場面を思い出していた。



いつもの明るい日明先生からは、とても想像できない表情。



怒りとか、哀しみとか…


なんていうか……

一番触れてほしくないところに、一番触れてほしくない人が触っちゃって……


感情が爆発しちゃった感じ……?




あれだけで押さえた日明先生は凄いのかもしれない。




そして、冷静すぎる龍心先生の表情……



ああなることを全て把握してたみたい……




龍心先生にも、日明先生に似た何かが背負われてる気がしてる。



なら、分かるはずなのに…


日明先生の気持ち、分かるはずなのに……





どうしてあんなことになるの……?







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