ご褒美は唇にちょうだい
「ふたりきりとなれば、話は別です。あなたたちは注目度の高い朝ドラのヒロインと相手役ですよ。まだ放映も始まっていない」


落ち着こうとすればするほど俺の声は低くなり、操の声には険が混じる。


「小鍛冶くんの事務所とは共演の親睦のため、マネージャー同伴だったという話でまとめてあります。しばらくは記者が貼りつくでしょうが、余計な弁明は不要ですので」


「はいはい」


「ドラマのプロデューサーと局側には、謝罪済みです」


「お手数かけます」


「念のため聞きますが、交際することになったわけじゃありませんね」


操が黙った。
ちょうど信号で車を停車させると、俺は操に顔を向け、問い詰めた。


「付き合うことになったんですか?」


苛立つ声に、操がやや気圧された顔をした。
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