ご褒美は唇にちょうだい
「……なってない。そんなわけないでしょ。共演者と付き合うなんて、やりづらくなるもん。あり得ない」


それなら、さっさと否定しろ。
心の中で呟く俺は、自分でも何がどうしてここまで苛立っているのかわからない。

とにかく、操が俺を裏切ったような気がしているのだ。
俺が命がけで守っている女優生命を、操本人が軽んじている気がしてしまうのだ。

実際は、それほどのことでもない。
この程度のスキャンダルでよかったし、早いうちに経験しておいた方が、イメージ回復も早い。

頭ではわかっているのだ。しかし、心が納得していない。

操には反省の気持ちがあるのか。もうしないと誓えるのか。


「今後、少なくともこのドラマのクールが終わるまでは、小鍛冶くんとの関係は変化させないでください」


「……じゃあ」


操が車窓に顔を向けるのが視界の端の映る。


「ドラマが終わったら、付き合ってもいいの?小鍛冶くんと」
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