ご褒美は唇にちょうだい







スクープ写真の載った雑誌の影響で、俺の仕事は一層忙しくなった。

操と小鍛冶の周りには記者、レポーターが貼りつき、隙あらばコメントを狙って寄ってくる。
事務所コメントは双方出している。しかし、それでは納得しないのも世の常。
火消は最大限に、後は時間の解決を待つしかない。

操には余計な動きをしてほしくないというのに、彼女は彼女で俺に怒りを覚えているようで、俺を避けるのだ。
送迎は拒否、撮影に顔を出しても、ほとんど会話に応じない。

まったくどういうつもりだ。
試しに楽屋でわざと距離を詰めてみた。以前のように、髪に触れる程度だ。
しかし、操は大仰に逃げることも顔を赤くすることもなかった。
俺の手をどけて、「大丈夫、気にしないで」と言っただけ。

ああ、面倒なことになった。

操はもともと難しい精神構造をしている。こだわりが強く、神経質なところがある。
それが女優業にはプラスになることはあっても、人間対人間になると格段に面倒くさい。
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