ご褒美は唇にちょうだい
とっさに思った。
ここで冷静に判断できるのは俺しかいない。

操と小鍛冶の間に割って入り、小鍛冶の手をはずさせる。
やはり皆に聞かせるために、俺も声を張る。


「小鍛冶くん、冗談はやめてください。週刊誌の記事を事実にしたいんですか?」


わざとらしくにこやかに言うが、手をはずされた時に、俺の本気はよく伝わっただろう。
小鍛冶は真っ直ぐな瞳で俺に挑む。


「すみません、真木さん。でも、俺はっきりさせておきたいんです。立場はわかっていますが、俺も鳥飼さんも大人ですから、黙って見守ってもらえませんか?」


大人はこういう告白の仕方はしないんだよ。このガキが。

俺は口に出せない悪態を、腹の中で呟き、いっそう悪辣に微笑んだ。


「鳥飼にも立場がありますので、こういったお話は事務所を通してやりましょうか」


小鍛冶の後ろから、遅れてマネージャーが走ってくるのが見える。
どうやら、小鍛冶はマネージャーを離席させてこの実力行使に及んだようだ。

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