ご褒美は唇にちょうだい
誰もが小鍛冶の解答に注目していた。

すると、小鍛冶がにっこりと微笑んだ。
振られたばかりの男には見えず、また演技臭さはまったくない。素の笑顔のようだった。


「鳥飼さんは役者としての器が違う。いっそう、鳥飼さんが好きになりました」


まったく堪えていない風の小鍛冶の言葉に、操も口の端を引きつらせた。
小鍛冶がマネージャーを押しのけ気味に身体を近づける。


「諦めません。振り向いてもらえるまで頑張ります」


「いえ、無理なので、早めにやめてもらえると助かります」


操の答えに、誰かがクスクスと笑いだした。
さらに追い打ちをかけるように小鍛冶が笑顔で続ける。


「操さん、って呼んでいいですか?俺のことは奏って呼び捨てにしてください」


「いえ、呼び方はお互いそのままで」


「なんでですか!操さん!」


「無理です、小鍛冶くん」


このやりとりに、ついにスタジオ中でどっと笑い声が怒った。
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