ご褒美は唇にちょうだい
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操の着替えが終わる頃を見計らって楽屋に顔を出した。
撮影中に、小鍛冶のマネージャーとは話し合っている。
対応は決まった。とはいえ、苛立ちはいや増すばかりで、心は騒がしいままだ。
イメージダウン甚だしい。
すべては小鍛冶から操をガードし損ねた自分の責任だ。
しかし、この苛立ちの矛先には操もいる。
あれほど慎重な操が、なぜ、油断した。なぜ、あんな若者を近づけた。
一緒に食事なんぞに行くから相手は脈アリと思うんだ。
こうなる隙が操自身あったのは違いない。
この時期にスキャンダルの追打ち。
また、火消しに奔走しなければならないのはいいとして、朝ドラの制作サイドは何を言ってくるだろう。
自分にも操にも怒りしか覚えない。
「さっきのは、小鍛冶くんの独断ですか?」
背中に声をかける。操は楽屋でドリップコーヒーを飲んでいた。
俺には背を向けているけれど、鏡台の前にいるので鏡越しに目があう。