ご褒美は唇にちょうだい
操はバカにしたように答えた。


「愛の告白を示し合わせることってあるの?」


「あなたたちが公認の関係になりたいと思っているなら、あるいは」


操は先日、小鍛冶と付き合う未来もあると暗に口にしていた。
そして、今日見た眩しいばかりの美しい男女の告白風景が、妙な想像を呼ぶ。


「だったら、私があの場で断る理由がないじゃない」


操がふうっと呆れたため息をつくから、余計に苛立たしい。


「しばらくは小鍛冶くんとは距離を置いてくださいと言いました」


「この前も言われたし。その通りにしてる」


今日も彼から近づいてきたわけだが、そこに操の責任がなかったとは言えない。
当然、食事に誘われた時点で好意には気づいていたはずだ。
その後だって、無責任に連絡を取り合っていたかもしれない。


「一緒に出かけるのはもちろん、撮影中もどこに目があるかわかりませんので。携帯の連絡も控えてください」


「ねえ、久さん。私、清純派アイドルってわけでもないよね」


操か鏡越しにも俺から目をそらして問う。
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