ご褒美は唇にちょうだい
「そうですが、男性スキャンダルを起こしていい時期でもありません。朝ドラには厳格なイメージがあります。クランクインから間をおかず、相手役と恋愛だなんて受け入れ難いでしょう」


「じゃあ、女優でいる限り私は恋愛できないの?」


操が振り向いた。
詰問口調で険しい表情だ。

俺は苛々と髪をかき上げる。
この前も言ったばかりだろう。


「スキャンダルが出たばかりです。とにかく『絆の詩』放映終了まではやめてください」


「その後は恋愛していいの?自由に?誰とでも?」


「倫理観に基づけば、相手は指定しません」


「じゃあ、そうする」


操は憎々しげに言った。
俺に責められているのが面白くないのか。まったく、いつまでも子どもで困る。

そう思っていたら、操の瞳からボロッと大粒の涙がこぼれた。

次から次へと頬を伝い落ちていく雫。
彼女の胸や膝に落ちては弾ける。

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