ご褒美は唇にちょうだい
「真木さんに恋人ができてもいいんですか?」


「うん、仕方ない。でも、一番大事な部分で繋がってるのは私だってわかってるから」


これはちょっぴり嘘だ。

久さんは、たぶん誰とも付き合わない。結婚もしない。

この先もずっと、私を支えることに人生を使ってくれる。
確証はないけれど、彼の優しい束縛を感じるたび、それは実感に変わっていく。

鎖で互いをしっかり縛り合う一蓮托生の絆。

叶わないけど、ずっと一緒。

そんな停滞がたまらなく愛おしい。

小鍛冶くんがふうとため息をついた。


「じゃあ、俺はまだ操さんを口説ける余地があるじゃないですか」


なに、そのプラス思考。今、そんな感じじゃなかったよね。
私はツッコミ損ねて、笑う。それからきっちりと答えた。


「ないけど、余地なんか」


「いーや、人妻にならない限り、いけると思ってますよ」
< 141 / 190 >

この作品をシェア

pagetop