ご褒美は唇にちょうだい
小鍛冶くんがばっと立ち上がった。
スーツをパンパンと叩くと、私を見下ろして言った。自信満々の笑顔で。


「これからも全力で告白し続けますので、よろしく!」


「よろしくしたくない」


「とりあえず、デートしましょう!」


「しない」


そんなやりとりをしている私たちの視界に、二上さんと連れ立って歩いてくる久さんの姿が映る。


「残念、真木さんが来ちゃった」


小鍛冶くんは無邪気に笑って、久さんに会釈をするとスタジオに戻っていく。

私は見送りながら立ち上がった。
私もそろそろ戻らないといけない。


「操ちゃん、真木さんに言っておいたからね」


二上さんが声を張り、私はふたりに向かって片手をあげると、スタジオに向かって歩き出した。


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