ご褒美は唇にちょうだい
久さんは反対の左手で私の頬にかかる髪を一房すくう。
長い指が髪と頬に触れ、遊ぶような手の動きがくすぐったくて、心地よい。

目を細めて笑うと、不意打ちでキスされた。
柔らかく触れるだけのキスに、幸せな気持ちになる。

唇が離れてから見上げると、久さんも穏やかに私を見つめていた。


「操さん、帰りましょう」


久さんが当たり前のように言い、私は頷いた。


「うん。帰り道にスーパーに寄りたい」


「二上さんに健康管理を言われてしまいましたからね。スーパーで自炊用に食材を買うのはいいと思います。まだ開いているところにお連れしますよ」


もしかすると、この関係は不自然なものなのかもしれない。
まっとうな恋でもなければ、依存でもない。

ひたすらに強固な鎖の絆。

それでもいい。

私たちはずっと一緒。そのことだけ確実であれば、もう何もいらない。




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